成功の経験も失敗の経験もすべて価値に変えることができる
黒田真樹
ビジネスストラテジスト
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
博報堂のコンサルティングの特徴の一つは「生活者発想」を軸として、「構想」だけではなく「実装」や「運用」を含めた企業支援を行っている点にあります。また、さまざまな経歴を持つ社員とともにチームをつくってクラアイアント支援に当たるのも大きな特徴です。コンサルティングファームから3年前に転職し、ビジネスストラテジストとして活躍する黒田真樹に、現在の仕事の面白さや博報堂という会社の魅力について話を聞きました。
■博報堂は「人間」に興味がある人が多い会社
─博報堂に入社したのは2018年とのことですが、それ以前はどのような仕事をしていたのですか。
大手コンサルティングファームの戦略部門で働いていました。
─博報堂に転職しようと思った理由をお聞かせいただけますか。
私がコンサルティングファームにいた頃、博報堂とコンペで競合になることが何度かありました。広告会社とコンサルティング会社の事業領域が重なりつつあるということですね。博報堂には、生活者発想という切り口から、経営課題の解決や企業成長を実現するロジックやソリューション、そして、クリエイティビティ溢れるプレゼン力や資料から課題解決や企業成長実行力を納得させ、それを成し遂げてしまう点等の特異性、価値がありますから、コンサルティングファームからすればかなりの強敵なわけです。
コンサルティングファームでの現業の中で博報堂を意識するようになり、博報堂のことをいろいろ調べてみると、広告を主としたマーケティングコミュニケーションだけでなく、クライアントの新事業創出の支援をしていたり、自社で新しい事業を創造していたりしていることがわかりました。この会社なら、これまでよりも本質的な提案をクライアントにできるし、自分自身も事業創造に関われるかもしれない。そう考えたのが博報堂に転職しようと思った理由です。
─異業種からの転職ということで苦労したこともありましたか。
ほとんどないですね。周囲の皆さんがとてもオープンマインドで、仲間をリスペクトする文化があるので、新しい仕事環境に馴染むのに苦労はありませんでした。
博報堂に来て私が最初に感じたのは、人間に興味がある人が多いということです。いろいろな人にいろいろなことを聞かれて、「いったい何回自己紹介をすればいいんだろう」と思ったこともあります(笑)。相手の話を聞き、その人を尊重し、決して否定ありきなことは言わない。そんな人ばかりでした。普段の会話や仕事の中での議論の中でも、この姿勢・文化が博報堂の中で根付いているので、自分でもびっくりするくらいすぐに仕事や会社生活に溶け込むことができましたね。
─仕事の内容に関しては、わからないこともあったのではないでしょうか。
それも実務の中で周囲の人たちに聞いて教えてもらうことができたので、まったく問題はありませんでした。おそらく、広告(4マス)中心のマーケティングコミュニケーションの仕事であればわからないことだらけだったと思うのですが、マーケティングシステムコンサルティング局の仕事は前職との共通点が多いので、戸惑いはそれほどありませんでした。
わからないことやできないことがあったとしても、周囲の人を積極的に頼ればいいと思うんです。逆に自分のこれまでの経験を活かして仲間を手助けできる場合もあります。それぞれが得意なことや自身の価値を発揮すれば、チームのレベルが上がって、クライアントの課題を解決する精度、提供するサービスレベルも上がると思っています。
■生活者にとっての本当の価値とは何か
─現在のお仕事についてお聞かせください。
ビジネスストラテジストの立場で小売店様のDXをご支援させて頂いています。DX戦略の立案だけでなく、新たな顧客接点の実装、さらには、クライアント自身でその顧客接点の運用が内製化できるようにオペレーション設計までご支援しております。小売店のDXにおいて、デジタルを活用して顧客との関係強化を行うことは1つの大きな方向性ですが、全部を無機質にデジタライズすることが小売店のDXであるとは考えていません。リアルな店舗を構えていることや人が接客していること等、これまで培った小売店ならではのメリットや価値というものがあると思っています。ですので、小売店ならではの有機質というか、血の通った人間的なDXを考える必要があるのではないだろうかと考えていますし、そのような考えのもと、DXをご支援させて頂いています。
─ECの仕組みづくりなども支援しているのですか。
重要な仕事の一つですね。世の中には様々なECサイトがあります。その中で、製品数の優位性だけを差別化要素として小売店がEC市場へ参入しても、ビジネスの勝者になることは、非常に難しいと考えています。詳しい戦略、取り組み内容は言えませんが、クライアントの小売店様には、単なるモノを売る場としてECを捉えるのではなく、顧客に対して特別な配慮を示しながら、販売員、ひいては小売店の提供価値を伝え、顧客とコミュニケーションしながら商品やサービスを提案できる場=プラットフォームとして戦略立案、実装をご支援させて頂いています。
DXの難しい部分は、仕組みをつくれば終わりではないということです。クライアントが将来、自立して、且つ継続的にその仕組みを運用できるように、オペレーション設計や、場合によっては組織・人材設計が必要です。DXを行ったばかりに、そこに働く従業員の方々に対して、現業に加えて新しい仕事が単純に増えてしまっては、せっかくの仕組みが陳腐化してしまう可能性がありますし、場合によっては、経営課題解決に対してDXへの思いは強いが現場での実行力が伴わず企業の成長機会を逃してしまう可能性があります。DXの効果を最大化できるように、商品・サービスの在り方、他の仕組み、オペレーション、組織・人材等、俯瞰的に、横断的にDXを捉え、きちっとケア・設計し、現場へ落とし込むところに、DXコンサルティングの妙があると考えています。
─前職と現在とでは、働き方や仕事に対する考え方が変わりましたか。
コンサルティングという点では同じですが、携わる領域が以前より広がりましたね。多くの場合、クライアントがコンサルティングファームに求めるのは、業務の効率化とそれによるコストダウンの道筋を考えることです。一方で、ビジネスは、コストダウンだけでなく、当然、売上向上の道筋も求められます。そのためには、生活者(場合によっては、法人顧客)にどのようにアプローチしていくかという戦略を考えなければなりません。単にアプリを使うとかSNSと使うといった手段に閉じた話ではなく、対象となる商品・サービスが生活者(場合によっては、法人顧客)にとって、どういう価値を提供するモノ・コトなのか、その価値を提供するためにどういう手段が有効なのか、自社経営資源を変革する必要があるのかという流れでモノゴトを考えなければならないわけです。つまり、博報堂DYグループが掲げる生活者発想を踏まえたコンサルティングです。そのような視点での仕事は、以前はほとんどありませんでした。
■「粒ぞろい」よりも「粒ちがい」
─キャリア採用で入社した立場から見た博報堂の魅力をお聞かせください。
これほどいろいろなバックグラウンドを持つ人たちを受け入れる会社は珍しいですよね。企業にはそれぞれに独自のカルチャーがあるので、どうしても均質な人材が集まりやすくなります。その点、博報堂は多様な人材を受け入れて、各々の能力を博報堂の価値に、そしてクライアントへの提供価値に変換している点に大きな魅力があるように思います。
─これからチャレンジしたいことをお聞かせください。
生活者を感動させ、世の中にインパクトを与えられる仕事をしたいと思っています。クライアントにとっての一番の喜びは、自社の製品やサービスによって人が行動を起こしたり、感動したり、幸せになったりすることだと思うんです。そのような喜びをクライアントと分かち合っていければいいですよね。
─最後に、求職者の皆さんへのメッセージをいただけますか。
キャリア採用での転職を目指す人たちには、これまで様々な実績や経験のある方だと思います。その実績や経験を大切にしてほしいと思います。成功した実績だけでなく、失敗した実績も含めて、これら実績が博報堂においてどういう価値になるのか、さらには、クライアントに提供するサービスに、どう活かされるのかを考えて頂きたいと思っています。そして、考えたコトを実際の仕事でチャレンジしてほしいですね。私自身、これまでの実績や経験すべてが現在の仕事の糧になっています。博報堂に転職して本当によかった。そう思っています。