構想から実装まで“やりきる”、
博報堂のビジネスプロデューサーとは

望月 圭介(※写真左)
アカウント統括室 部門長
児玉 綾子(※写真右)
人材開発室 部門長代理
いわゆる営業職に該当する職種を、博報堂では「ビジネスプロデュース(以下、BP)職」と呼んでいます。得意先に寄り添い並走する仕事ではあるものの、一般的な営業とはまったく違う仕事です。「BP職とは?」をテーマに、職名に込められた思いや求められるスキルについて、アカウント統括室の望月局長と人材開発室の児玉局長代理に語ってもらいました。
一緒に働きたいと思えた博報堂の社員たち
―入社の経緯をお聞かせください。
望月:1990年に博報堂に入社したときから1年前まで、ずっとBP職を続けていました。大学生のとき、応援団だったんです。野球部やボート部など、さまざまな部を見られる立場がおもしろくて。その経験から「フラットな立場の会社に行きたい」と思ったのが、そもそも広告業界を目指したきっかけです。あと当時VHSテープで録画していた時代だったので、昔録画した番組に流れる古いTVCMを見て、「広告はその時代を映していておもしろいな」、「広告を仕事にしたい!」と興味を持ちました。
それで博報堂の人たちにOB訪問をお願いしたら、本当に親身になってくださって。社員のみなさんとのさまざまな会話の中で、魅力的に見えたのを覚えています。その頃から“ 粒ぞろいより、粒違い”、 “人が資産”って言ってましたから、そんな人を大切にする会社っていいなって。帰りの電車の中でつり革を持つ手に力が入ったといいましょうか。「オレ、この会社に入りたいんだな」と確信しました。
児玉:大学で家族社会学、大学院ではまちづくりを専攻し、“家族の在り方が変わる中で、どのようなニーズがこれからあるのか”みたいなテーマで調査や研究をしていました。生活者の声を拾い、ニーズを顕在化させて施策に取り込むのが学生の頃から好きだったんだと思います。
就職時には、コンサルティング会社が選択肢としてまず頭にありましたが、ほかの企業や業界の研究をしてみたんです。知人の勧めで博報堂の社員に話を聞いてもらう機会を得ました。
産官学連携で新しいサービスを作りたいと話したら、「おもしろいね」といってもらえて。あと「チームで動く仕事が多いから、この人と一緒にいても大丈夫かを面接で見極めた方がいい」といわれたんです。その観点で見ても、博報堂なら絶対楽しいと思えました。博報堂だけでなく、広告についても深く知らない状態だったのに、それでも面接が毎回盛り上がって、「この会社いいな」と思ったのを覚えています。
マーケティング職からみた博報堂のBP職
児玉:入社後はマーケティング職に配属されました。最初に担当した日系日用品・消費財メーカーは、n=1の意見を大事にする会社でした。グループインタビューと調査を繰り返す日々が始まります。500件以上は、生活者の声を聞いてインサイトを追究しました。ほかのクライアントも担当しながら、18年間ブランディング・コミュニケーション戦略や商品・サービス開発などに従事してきました 。そのあと人材開発戦略局に異動して、フロントであるBP職の能力強化のため、職能開発のミッションを受けて、現在に至ります。
―マーケティング職経験者としてBP職をどのように捉えていらっしゃいますか。
児玉:BP職の職能開発をすすめるにあたって、さまざまな業務領域に従事するフロントのBP職46名に協力してもらい、志望動機から現在に至るまで、約15〜20年ぐらいのそれぞれのキャリアヒアリングを行いました。インタビューからインサイトを発見する、マーケ時代のスキルがこのとき活かせたと思っています。どのような環境で・誰と・どのような業務に従事すると、どのような力やスキルが身につくのかを整理して言語化し、現場のBP職社員と確認しながら、スキルを可視化させていきました。

マーケティング職をやっているとき、「いいよね、手に職があって。転職もしやすそう。自分たちは何もないからつらいよ」とBP職からいわれる機会がよくあって違和感を持ったのを覚えています。というのも得意先を含めてマーケターは山ほどいます「手に職といわれても、持っている人は多くいる」と思ってました。逆に博報堂のBP職は、さまざまな人たちと協業ができて、プロジェクトを合意形成しながら着地させます。ほかでは絶対できない仕事で、BP職の方がすごいと思っていました。
BP職が持つ力は、資格や可視化されたスキルではないからわかりにくい、みんなができて当たり前だと思っているから、秀でたものがないと当人は思っていたんだな、と。だからこそ、博報堂のBP職ならではの強みを可視化したいと思い、BP職のスキルを可視化した“ビジネスパフォーマンスガイド”やどのような仕事でどんなスキルや経験が得られるかがわかる“ジョブナビ”などを作りました。
博報堂のBP職は、いわゆる営業ではなく、プロデューサー
―BP職の強みについてもう少しご意見を聞かせてください。
望月:BP職は決まった売り物があり、それを売るという営業スタイルではなく、文字通り”プロデューサー”なんですよ。クリエイティブやマーケティング、メディアそれぞれの視点がある中で、軸となってスタッフ、そして得意先を一つにまとめるのがBP職の役割なんです。
だから得意先に言われたれたままにやるだけではプロデューサーじゃないんです。
僕が局長代理のときに、局員から提案内容に関して「正解はどちらなんでしょうか?」と聞かれた経験があります。「何を言ってんだ!自分が決めたことを正解にするのが仕事じゃねぇか!」と僕は明るく返しましたよ。得意先にとって何が正しいかを考えて、成功する環境を整える・形にして認めてもらうのがBP職の仕事なわけです。
児玉:そうですよね。世にいう営業と、博報堂のBP職はまったく違います。博報堂には、明確なオーダーがない場合も多く、そのため自分で予測を見立て、スタッフにオリエンする力がまず必要です。また得意先に決まったものを出したら終わりではなく、状況変化を吸収しながら進めていく柔軟性が求められます。「ここまでやったらもう戻れない」みたいな場面でも、「本当に得意先や生活者のこと考えたら、変えるしかない!」と意思決定できる、そして実際行動に移す。だから、博報堂のBP職は強い。無理難題を着地させることで鍛えられた胆力も含めてすごいと思います。
―チームの雰囲気について教えてください。

望月:雰囲気ですか、“粒違い”の集まりなので、チームによって結構雰囲気違うんですよね。けど、僕らの仕事って、一人で動くことはほとんどなくて、チームで動きます。そんなときに、「自分でこうしたい!」という強い想いがあれば、みんながサポートしてくれる、そんな雰囲気は間違いなくありますね。
僕自身は、得意先に対して突っ込んでいくタイプだったと思います。自分が中心になって、スタッフと一緒にプロデュースして、みんなをまとめて、得意先の悩みを解決して喜んでもらう、担当した商品も売れるみたいな成功体験ができたんです。思い返せば、その時もチーム一丸となってワイワイガヤガヤやってましたね 。
部長や局長になったのちに自分自身の成功体験を喋る機会があると、その話を聞いた社員のモチベーションにつながっていくのを肌で感じてきました。後輩の人材育成をするときも、いかにその成功体験を作るかを意識していますね。
構想から実装まで”やりきる”
―BP(ビジネスプロデュース)職という職名の由来はどのようなものなのでしょうか。
児玉:ビジネスプロデュース職という名前に至るまでには、さまざまな議論を重ねました。博報堂が大事にしている“パートナー主義”を踏まえて、元々あった“アカウント”の言葉は消さない方がいいのではという指摘がありました。一方で、得意先も社会の一つと考え、社会全体の中で新しい価値を創出していくのであれば、ビジネスプロデュースでいいのではないか、という意見もありました。最終的には、“社会に対して価値を提案する仕事をしていく”という思いを重視して、“ビジネスプロデュース職”になりました。
“何をするか”という企てのところも含めて、プラニング・構想・スタッフィングなどを行い、着地させていくBP職の仕事そのものが“ビジネスプロデュース”だと思います。
マーケティングコミュニケーションがメインではあるものの、さまざまな領域が拡がっていく中で、あらゆる観点で“ビジネス”を捉えた方がいいとの想いも込められているのです。
望月:その上で、納品まで・掲載まで、“やりきる”ことを僕たちは大事にしています。“構想から実装までやりきれる力”こそが、博報堂のビジネスプロデュース職の特徴です。
データ活用力だけでなく、明るさ・素直さ・逆境にめげずに企て続けられる心
―どのような人に入社してほしいと思いますか。
望月:“ミッション遂行型”と“パッション遂行型”の二つにBP職の仕事は大きく分けられるのではないかと考えてます。一言で解説すると、前者は“やらねばならぬ仕事”、後者は“やってみたい仕事”です。分量としては半々くらいだと思いますが、博報堂のBP職には“パッション遂行”ができる力が備わっていてほしいと僕は思います。それぞれが持つ夢・希望・志に僕は期待してしまいます。理屈は後からいくらでもつけられますから。「正しいことをしよう」より、「好きなことを突き詰めていきたい!」の方が僕は惹かれます。愛や熱量がないと、いい仕事はできませんからね。
僕が大事にしているのは、“素直さ”と“明るさ”です。失敗を恐れずに立ち向かえる、トラブルを乗り越えるには、明るさと素直さが必要なんです。そんな人は、最初は失敗ばかりでも、失敗の引き出しが多くあるから、10年ぐらい経つといいリーダーになっています。そして“人が資産”と言っている僕たちにとって、人から教わる機会が多いので、そんな時も素直さや明るさって大事ですよね。
児玉:私は、「自分で企てたい」との想いがあり、逆境にめげないのが大事だと思います。すべてが思いどおりにはいかないですよね。得意先やスタッフに何かいわれたり、環境変化があってプランどおりに進まなかったりする場面も珍しくありません。「さぁ、ここからどうする!?」と立て直していけるかがベースとして大事だと思います。社内調査データでもこの傾向は出ていて、フロントで活躍しているBP職の仕事の姿勢として、‟自分が一番考えて、企てる”、‟逃げない、諦めない”が挙がっています。
「これは本当に必要か?」「これは何のために、誰のためにやっている?」との問いかけを無意識に・欠かさずできる人もいいと思います。自分に、人に対して問いを常に立てられるか。仮に短期的・疑いもせずにこなしているだけの人がいたら、ハッとさせられますから。仕事に対して常に考えて原点を見失わない人がBP職に向いています。
―スキル面での要望はありますか。
児玉:データマーケティングに多くの得意先が注力しているため、データ活用力は今後ますます求められると思います。嫌い・苦手では厳しいと思います。ただ別に、プログラミングができるからといって、重宝されるわけではありません。「どのような意味合いで収集や分析をしているのか」「どのような仕組みで得意先が動いているか」に意識が向いて、全体的かつ構造的に理解しようとする意欲があるかが大事です。100%はできなくても、優秀なスタッフが博報堂にはいます。意欲さえあれば、あとからいくらでもチームの力でカバーできるわけです。
望月:さまざまな環境の中で舵取りを任されてプロジェクトそのものを引っ張っていく仕事が博報堂のBP職です。有形・無形の商材を問わず、進む方向を自分で示して道を作り上げて目的地に到着できる人。そんな人に入社してもらいたいです。
−ほかにどのような能力やスキルがあるとよいと思われますか。
児玉:得意先と生活者両方の声を聞いた上で「自分に何ができるか」を問い続けられるのは、博報堂のBP職の特徴です。この問いかけができれば、同業はもちろん、未経験者でも活躍できる可能性は大いにあります。
あとはコミュニケーションプラニング、要はマーケティングコミュニケーションのプロデュースができる力がベースにあるとベストです。想いや価値を可視化して着地させていく経験を積むと、プロデュース力は身につきます。社会の変化に合わせてニーズやインサイトが変わったとしても、拾いあげて形にする力は不変的なものです。次のステップに挑戦するときにも、プロジェクトを可視化して着地させる力は役立つはずです。自分で企てを実現させて、世の中に発信していく力も仕事を通して身につくでしょう。
望月:絵を描いて終わりではなくて、アウトプットをする実装段階まで僕たちは一緒に付き合います。得意先と一緒に走れる、納品まで完遂できる、メディアとの付き合いもある、同じグループ内にデジタル領域に強い会社も複数ある。“生活者発想”のもとに長い時間をかけて集めてきた、人にまつわるデータまで博報堂にはあります。条件や武器というか、グループの中にアセットが多くあるので、やれることやできるものの材料が揃っているんです。ほかの業界や会社にはない、博報堂の魅力かなと思います。

キャリア入社を考えている人にメッセージ
望月:博報堂は、強い想いをもって一生懸命取り組んでいると、誰かが必ず助けてくれる会社だと思います。やりたいことを思い続けて発信していると、誰かが声をかけてくれたり、適材適所でアサインしてくれたりするんです。風通しがいい会社なんですよね。さらに今はマーケティングコミュニケーション以外の領域でもたくさんの武器があります。領域を大きく拡げて活躍している社員の話を聞くと、「やっぱり、いい会社だな」と客観的に思ってしまいますね(笑)。
現在の業種は問いません。ゼロイチで何かをプロデュースする仕事をやってみたいが、制約があって今の環境ではできない人は、博報堂に来てチャレンジしてもらいたいです。もちろん、時間がかかったり一度は駄目といわれたりするかもしれません。それでも「これをやりたいんだ!」という熱意を持ち続けて、「やってもいい」「任せてもいい」と周りに思わせられるだけの企てが自分で作れれば、博報堂は意外とできちゃう会社です。
児玉:博報堂、中でもBP職にはハイパフォーマーが多くいます。「なぜ博報堂を辞めないの?ヘッドハンティングをされているでしょう?」と質問する機会があったんです。すると「声はかけてもらっているけど、博報堂がいい」といいます。理由を聞くと…
「3,000社を超えるアカウントがあり、さまざまな組み合わせができる会社は他にない」
「さまざまな職種の人たちがいて、人がおもしろい。おもしろいチームを自分で作って、あれこれ繋げて新しいサービスの開発や提案が自由にできるポテンシャルがあるから、やりがいがある」
「事業会社に行ったら絶対経験できない領域の広がりがある。非常におもしろい」
望月さんがいっていたように、新しいものをゼロからプロデュースしてみたい、何かと何かを掛け合わせて新しいものを創出していきたいと思う人が輝ける環境が、博報堂にはあると思います。
さまざまな業界の課題にチャレンジできるのも魅力です。一時期に担当する業界は限られていても、たとえば一つの仕事でブレイクスルーができないときに、社内の他業界担当の人に話を聞くといいヒントが得られるケースも多くあります。挑戦がいかようにもできる博報堂で、縦横無尽に動き回って仕事ができるBP職に多くの人がエントリーしてもらえるとうれしいです。
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(2024年度時点)