2022.10.21

プラニングからプロデュースまで次世代型メディアビジネス"AaaS"の舵を切る

飯塚 隆博

AaaS推進プロデューサー
博報堂DYメディアパートナーズ  AaaSビジネス戦略局 局長


広告産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるべく、広告メディアビジネスの次世代型モデル”AaaS(Advertising as a Service)”を博報堂DYグループは提唱してきました。AaaS全体の戦略を企てるAaaSビジネス戦略局の飯塚局長に今どのような人材が求められるのか、話を聞きました。
 

メディアのプラニングとプロデュース両方の知見からAaaS業務へ

─これまでの仕事の歩みをお聞かせください。 

1995年に入社し、テレビ局のスポット担当として初任配属されました。もともとテレビ志望で希望どおりの配属でした。その後、学生時代にマーケティングを勉強していたため、メディアプラニングを実施する部門に異動しました。メディアプラニングは当時急激に求められ始めた領域で、多くの取引先を回り、メディアやクライアントが求めていることが肌で体感できたと思います。

そこから13年間メディアプラニングをしたあと、すべてのメディアを俯瞰するメディアプロデュース業務に従事しました。メディアに関する“何でもよろず相談窓口”としてメディアプラニングや企画提案をしたクライアントは200を超えます。その後、スポットやタイム、動画ビジネス、データビジネスの組織にいた時期もありました。そして2021年度からAaaSに向き合うようになり、今年2022年4月にAaaSビジネス戦略局が新設され、そこの局長を務めています。

 

中長期視点で「枠から効果へ」を実現する基盤や組織を整備 

─AaaSについて詳しく教えてください。 

博報堂DYグループから概念としてAaaSが提唱されたのは2020年12月ですが、実は構想自体はその数年前から練られ始めていました。広告のビジネスモデルやマネタイズなど含めて、広告メディアビジネス全般を変革すべき時期に差しかかっていたからです。そして変革の重要なファクターが、必要なデータを統合し、それを活用するシステム基盤を整えること。それがある程度完成したのが2020年12月ころでした。
 

AaaSは「枠から効果へ」を標榜しています。紐解くと、今までの広告メディアビジネスでは、広告枠に対して対価を払う形での取引が主流でした。例えばテレビの場合、CM枠に対して「1本いくら」や「視聴率換算でいくら」といった具合に。しかしクライアントが求めているのは効果です。それにもかかわらず購入した枠に対してどの程度の効果が得られたかが可視化されていませんでした。対するデジタルは、「クリックが欲しい」や「ターゲットにフォーカスした変え方をしたい」などの要望にダイレクトに対応できます。そこで、テレビもデジタルのように効果を可視化することでより広告メディアビジネスが高次元化すると考えたのです。

AaaSを理解するときには、どのようなデータを統合したかに着目してもらうのが重要です。生活者データや媒体社の保有するデータ、クライアントのファーストパーティデータを含むマーケティングデータ。これらのデータが今まではバラバラに管理されていました。それらのデータを集約した統合データ基盤活用の開発・活用により、同一環境下での複数データを横断した集計・分析が可能になったのです。さらに広告メディアビジネスを構成するプラニング・モニタリング・バイイングの3つの要素が統合ダッシュボードの上で動いていくことで、スピード感を持った運用や効果の追求が可能になりました。

AaaSの基盤整備によって、テレビを中心としたメインフレームのメディアも含めて効果の可視化ができるようになりました。同時にそれをクライアントがマーケティング活動に活用するためのソリューションも提供できるようになっています。メディアやマーケティング施策の投資配分を最適化しKPIを設定するためのAnalytics AaaS、テレビとデジタルの統合管理・運用ならTele-Digi AaaS、テレビ・デジタルそれぞれのPDCAを回すならTV AaaS”や”Digital AaaSを提供しています。ソリューションを4つに分けたことで、わかりやすく体系付けられたと考えています。社内的・対外的なアピールもしやすくなりました。

 

上記図の一番右横に”基本サービス”とあります。基本サービスは、ツール使用だけで得られる効果とそれに対する利用料金をパッケージ化したものです。AaaSは人を介さずともある程度の効果が見込めます。しかし博報堂DYグループの多くのクライアントでは、基本サービスだけには収まらないのが大半です。そのためツールを利用しながらコンサルタントが提案していく、より上の”付加価値サービス”も提供しています。

 

─AaaSビジネス戦略局のミッションは何ですか。

2021年から、AaaSの戦略を立てクライアントへのソリューション導入を進める組織は存在していましたが、2022年4月からは“AaaSビジネス戦略局”として、AaaS導入推進のための戦略立案やAaaSの広報PRなどに特化した組織が立ち上がりました。クライアントに実際にAaaS導入を提案する組織や、データ整理・ツール開発を行う組織と協業しAaaSの導入推進や理解の促進を行っています。

 

AaaSを“翻訳”して広めていく

─チームの体制や協業する人についても教えてください。

AaaSビジネス戦略局は3部体制です。博報堂・大広・読売広告社(読広)のAaaS推進窓口として戦略立案と広報コミュニケーションを行う部署、AaaSの持つデータ基盤やソリューションを使って放送局と一緒にメディアの価値を引き上げていく部署、AaaSの拡販とマネタイズを担う部署に分かれています。部署長以下が1年目から7~8年目ぐらいの若手多めで構成されているチームで、今年は新人2人が入ってきました。

同じAaaSに携わるセクションと定期的に、クライアントとのやりとりや、開発状況の進捗を報告し合っています。AaaSソリューションはアジャイルに開発を進めているので、議論が欠かせません。ほかにもそれぞれのクライアントに対峙しているビジネスプロデュース職(営業)とも向き合ったり、メディアを取りまとめてくれるセクションとの情報共有をしたりは密に行っていますね。「このようなニーズがあって、このようなシステムを作りました」といった具合で、お互いの話を聞き合いながら一緒に作っていく場面は多いでしょう。

 

─社外ではどのようなステークホルダーと接する機会が多いですか。

各メディアの担当者と接する機会が多くあります。記者を対象に勉強会を開催し、取り上げてもらう機会を増やしています。勉強会で説明するのはAaaSの目的や役割だけではありません。競合はどこなのか、競合がどのようなサービスを提供しているのか、メディアの価値をどのように押し上げようと考えているのか、クライアントに何を提案しているのか。周辺情報も含めて、記事化につながる情報の提供を心がけています。

 

─AaaSにはどのような課題があるとお考えですか。

社内に対してAaaSをわかりやすく“翻訳”するのが直近の課題だと考えています。AaaSソリューションは常にアップデートされ続けているので、そのソリューションで今何ができるのか、クライアントの悩みを解決できるソリューションはあるかについての最新情報が伝わる環境を整備する必要があるのです。そのために社内のナレッジデータベースにAaaSのページをオープンし、AaaSソリューションそれぞれの特徴をまとめた資料などを随時公開しています。今後もAaaSを積極的に活用してもらえるよう、ページのコンテンツを拡張していく予定です。また今まで通りの広報PR活動を進めながらもさらにAaaSとしてレピュテーションを取っていく、独自の優位性を伝えていくのも重要です。TV AaaS Labについて2022年9月15日にリリースしたときも、多くのリアクションがありました。セミナーやイベントなどに登壇するのも重要だと感じています。

 

─AaaSビジネス戦略局の今後の展望をお聞かせください。

従来のメディアビジネスは方向転換の岐路にあると考えます。テレビの視聴率は減少傾向で、テレビビジネスのアップデートの必要性が増してきました。デジタルは伸びているものの、変革が起きず伸びも鈍化していく懸念があります。「既存の広告ビジネスをゲームチェンジしなければならない」。この発想がAaaS構想の根底にあります。
 

グループが成長し続けるためには、広告マーケットの捉え直しが必要です。マネタイズの仕方を多層化していく必要もあるでしょう。広告業界やメディア業界だけでなく、クライアントの状況や社会の構造が変化している中で、データやテクノロジーの重要性が増しているのは間違いありません。投資したコストがどのようにリターンされていくかまで、今まで以上に厳しい目で見られる時代です。しかし逆に言うと、効果まで見せられる基盤ができてきたからこそ、どのようにマネタイズするのかも含めてひとつの市場になったといえます。


今まで広告費だけだったのが、結果が出るようになれば販促費を広告に回すクライアントが出てきてもおかしくありませんよね。デジタルは効果に投資できるため、広告費以外も投資されるようになってきて伸びたと私は考えています。広告費と販促費を区別していない企業は特にこの傾向が顕著かもしれません。AaaSによって効果の可視化がテレビでもできるようになると、広告費の枠を超えた投資の流れが起こってくるのではないでしょうか。

 

知見だけでなく、チャレンジ精神やクリエイティビティが活きる

─どのような人を採用したいと考えていますか。

PRや戦略立案の業務経験者を主に求めています。特に放送局を中心としたメディアビジネスのアップデートをしていけるような人材。広告やメディアに関する最低限の知見は持っておいた方が活躍しやすいかなと思います。

また広告ビジネスの変革をプロデュースする難易度の高い仕事をしていかなければなりません。実現のためには、広告・メディア以外の業種で事業を拡大させた経験がある人が実は欲しいと思っている面もあります。違う領域での経験がある人がAaaSを担当したら、「この辺りの概念をひっくり返せばいいのでは!?」と違った発想が生まれると思うのです。だからクリエイティビティやチャレンジ精神を持っているかも重要な要素だと考えています。変革を自ら起こしていける人と一緒に頑張りたいです。

 

─AaaSビジネス戦略局にはどのようなキャリアを歩まれた人が多いですか。

メディアの知見が得られる過程をたどってきた人が多いです。テレビの仕事をした人、メディアプラニングを経験した人、あとはビジネスプロデューサーを経験した人などがいます。そこは管理職も若手も同じですかね。中には新卒入社1~3年目もいて、最初の配属先になったこの局で育っている人もいます。

 

─入社後の育成をどのように行っていますか。

博報堂DYグループならではの仕事の仕方を理解してもらうのが重要だと考えています。ビジネスモデルや広告主との向き合い方などはしっかりお伝えしますね。特に媒体社との向き合い方は、博報堂DYグループならではの立ち振る舞いをしなければなりません。博報堂DYグループだからこそできた事例などを学んでいただきます。

また、プラニングの要素が仕事に直結します。AaaSビジネス戦略局内のプラナー経験者はもちろん、ほかの部門の手も借りて、実際に行いながら知見を身につけてもらう予定です。

 

─キャリア入社者は活躍していますか。

今月2022年9月に入社したばかりですが、AaaSのアップデートをさっそくお願いしている人がいます。多様な経験を積んでいて、ビジネスと事業の二つの視点を持っている人です。AaaSをどのように広げていくのか・どのように市場マップに落とし込んでいくかを積極的に考えてもらっています。さらに社内でのAaaS導入推進状況も含めて理解してもらいたいので、日々クライアントと向き合うビジネスプロデュース職(営業)やメディアプラナーとの定例会議や打ち合わせにも参加してもらっていますね。

部署長やチーフぐらいまでに経験豊富な人が多い部門なので、教育体系が非常にいいんですよ。部門内での情報共有だけでも素地がついていく面もあります。体系やフローといった言葉で表すよりも、部署内の人たちが育て上げる環境が充実していると言った方がいいかもしれません。

 

─最後にキャリア入社を考えている人にメッセージをください。

AaaSの領域は広いです。広告ビジネスの変革を自ら創出していく心意気が求められる仕事だと思います。そして考えるだけでなく実行に移していくプロデュースまでが業務の領域です。やりがいがあるのは間違いありません。幅広いキャリアを持ち、明るく楽しくチャレンジ精神を持って仕事をできる仲間をお待ちしています。
 


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